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カップ麺のお湯を流すときのベコッていう音と「デザインの輪郭」

デザインの輪郭

語り口調も、その内容も、どこかポカリスエットを思い出すような本です。人間の普通に一番近くて、言葉の一つ一つが体にす――っと染みていく、そんな自然な感覚が。名前は「デザインの輪郭」、著者は深澤直人。2005年12月発行。定価1,890円。出版社はTOTO出版。ISBNは4-88706-260-5。

まず伝えたいのは「この本に具体論を求めるな」という事です。最初に宣言されている通り工業デザイナーのひとり言ですから、そこから何を生み出せるかは判りません。全くもって実践的ではないし、著者の考える「デザイン」が正しいかどうかも判りません。そも「デザイン論」ではなく「デザイン観」って書いてあるし。

しかし、確かに「デザインの輪郭」は浮かんできた。朧気な輪郭が夜空に見えてくる、読み進めるたびに明度を増していく、そんな感覚が確かにあって。深澤さんをちょっと好きになってしまいました。極私的な視点から綴られた言葉だからこそ、「デザイン」の現在を考え直すきっかけになる、そういう本なのかな。

最初はまとめを書こうとしたんだけど、どうにもまとめられなくて。短い言葉一つ一つが重なっていく感覚は要約じゃ伝わらないかも知れない。だから、深澤直人という人間に興味のある人、「デザイン」をもう一度考え直してみたい人、表紙が気になった人、とにかく読む読まないは第一印象で決めてください。きっとそれが一番正しい。私はもう一度読み直すことにします。

デザインの輪郭
デザインの輪郭