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5年前のWebデザイン論は通用するか?「Web Site Design Vol.2」

Web Site Design Vol.2

ふと、「図書館って落ち着くし、何時間でも居られるし、只で借りられるじゃないか」という当たり前な事を再発見したので、早速行ってきた。それでしばらく書評でも始めようかと思う。

というわけでまずはコレ。技術評論社Web Site Design Vol.2。2001年10月発行・定価1344円。

「そんな古い本なんて使えない」とお考えのWebデザイナーの皆様、多分読んでいるとは思うけど是非。はたして5年前のWebデザイン論は通用するか?

「直感的」「一貫性」「融通性」

で、今回最大の目玉がコレ。特集1の「見守り、導く、ナビゲーション」Webデザインには欠かせない「ナビゲーション」を徹底的に解明する企画。

まず、ナビゲーションに必要なものとは何か?を考えるためにキーワードを提示。それが、「直感的」「一貫性」「融通性」の3つであると説く。

ここで重要なのが、「一貫性」の重要さを解説するところ。例えば50ページ、「リンクを示す」為の方法として……

>> 商品情報
>>はリンクを示すマーク。これは、サイト内だけの一貫性。
blue;">商品情報:青い文字にした線はリンクを示す。これはすべてのWebページで一貫している。
ボタンのように出っ張っているものは、押せる。これはWebページはもちろん、ソフトウェア一般、さらには生活空間においても一貫している。

一貫性といっても、それが通じる範囲はさまざま。広い範囲に通じる一貫性ならば、より多くの人に通用する。

といった方法について細かく説明しているのですよ。Webデザインに必要な考え方とは何か、というのが解るように出来ているのですね。

Amazonを実験台に

さらに進んで54ページ、ここでは具体例としてAmazon.co.jpを使います。例えばトップページの画像を出して「ナビゲーションバーの色を変えてみる」「バナー広告を入れてみる」「検索ボックスの位置を一番下にしてみる」「ボタンの大きさを同じにしてみる」といった実験を行い、「Amazonのデザインには全て意味がある」という優れたデザインのモデルとして解説しています。

この細かく実験を繰り返す方法、私は非常に気に入りました。「なぜこの色なのか」「なぜこの形なのか」を丁寧に進める感じ。さらに驚いたのが、Amazonは5年前とデザインがほとんど変わっていないという事実に気付かされた事。これは今でも通用するはず。

変わる時代の具体例

続いては62ページ以降、具体的なナビゲーションの方法を解説していきます。「アイコン」「タブ」「Flash」といった要素を学ぶ……というのですが、やはり5年というのは大きいですね、ここ。J-PHONE」「三和銀行」「富士銀行」といった今は無き名前のサイトが取り上げられてますよ。ああ古き良き時代。ああ時の流れに身をまかせ

……一応紙面ではちゃんと考察してます。たとえば「プルダウンのタイトルがクリックできない」とか「見た目だけで使いにくい」とか今でも多いですね。その中で注目されているのは三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)。たとえば「リンクには◆を付けて区別する」「タブの構成はあくまでシンプルに」「フレームなのに個別のURLを持つ(!!)」といった「何気ない使いやすさ」が生きていることがわかります。……今はどうなんでしょうか。謎。

簡易版ユーザーテストのススメ

ここで「でもさぁ、デザイナー視点からじゃ使いやすさはわからないよね」とお思いのあなた!!ここでは利用者に実際に試してもらうことを薦めています。80ページ、テーマは「技術評論社のサイト」。例えばこんな質問で。

「3,500円の予算内で『サーバーサイドスクリプティング』と『JavaScriptオブジェクト階層構造』について学習するのに『ポケットリファレンス』シリーズは適当か。」

条件をしっかり決めておけば簡単なテストだけでも問題点を発見する事ができ、最終的な仕上げに役に立つ……という結論。これを読み終えた時点で私は「自分のサイトも何とかしなきゃなぁ……」と現在構想中です。

WebのUIの現在と未来

締めがコレ。現在のWebがなぜ使いにくくなってしまったか……について詳しく載っていますが、正直書くのに疲れた。書評って難しい。

これについては後ほど書こうかと考えております。

まとめ

正直この特集だけでかなりの満足感を得られました。冒頭の「5年前のWebデザイン論は通用するか?」ですが、間違いなく通用します。Webデザインの基本が詰まっていて読む価値あり。さあ今すぐ図書館で検索……と言いたい所ですが、必ずしもあるとは限らないのが問題か。