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あの緊急事態は何Ott?「【新しい】新しい単位」

【新しい】新しい単位

人は「言葉にならない概念」を他人と共有することが出来ない。つまり、人が何かしらの概念を共有するということは、概念を言葉にするということである。

概念を言葉で表すことが出来るゆえに「×××××ってラッキーだよねー」という会話は成立するが、同じ「ラッキーさ」の差を理解することは難しい。「歩道橋でパンチラに遭遇するラッキーさ」と「乗った飛行機が墜落したが奇跡的に生還するラッキーさ」の違いを簡単に比較する方法は無いのである。言葉に形容詞を付け「とてもラッキーだよね」と表現することも出来るが、「ものすごくラッキーだよね」と「信じられないほどラッキーだよね」の違いを理解することもまた難しい。

数学や科学の分野では、物の大きさ/重さ/強さなどの状態を「単位」で呼ぶ。これにより、人はその違いをより明確に認識できるようなった。ということは、言葉では伝えにくい「概念」にも単位を付けてみれば――「【新しい】新しい単位」、著者は世界単位認定協会。2003年6月発行。定価1,000円。出版社は扶桑社。ISBNは4-594-04102-7。

完全なるネタ本

もともとはテレビ番組のコーナーとしてスタートしたこの企画、大ヒットした「新しい単位」に続く2冊目です。というか、最初で最後の続編?

さて、ここで実際にラッキーさの単位を見てみましょう。単位は「Rg(レジ)」。「レジで『お待ちのお客様どうぞ』と言われるラッキーさ」が1Rgです。「歩道橋でパンチラに遭遇するラッキーさ」は8Rgで「乗った飛行機が墜落したが奇跡的に生還するラッキーさ」は1.7MRg。比較すると212,500倍のラッキーさ……のはずですが、「1MRgは1億Rgに相当します」と書かれているので(間違いだよね?)ラッキーさは21,250,000倍。これで「飛行機事故の生還はパンチラ遭遇の21,250,000倍ラッキー」と堂々と言えますね……言えるのか?

単位の決め方自体が凄い上に、更に凄いのが単位の使用事例。「ロード・オブ・ザ・リングのしつこさ」「歌うだけでギャルが失神するモテっぷり」「北海道のお土産が『白い恋人』のありきたりさ」「結婚式で花嫁を奪い去るヒーローっぷり」など極めて日常的で実用的ですね♪ってそんなわけあるか――!!

他にも「緊急事態」「玉にキズ」「仲睦まじさ」「達成感」などに単位を作るのですが、注目すべきは各単位の挿絵。なんとあの五月女ケイ子のイラストを使ってます。おかげで本書のバカっぽさがよりバカらしく……ゴホン、リッチさがよりリッチに輝いてます。何と素敵でしょうか。

必読でしょう

ネタ本としてはかなりの高クオリティです。以下の注意事項を忘れずにいれば思いっきり笑えます。

  • 周りに人がいないのを確認すること
  • 1ページ目から丁寧に読み進めること
  • 全てにおいて意味を求めないこと
  • 誰かに薦める時は人を選ぶこと

日常にコミュニケーションの新たな可能性を見出したい人、とにかく笑えるのを読みたい人、また五月女ケイ子のイラスト集としても使えます。
私も吹くぐらいですので一読の価値はあるかとは思いますが、amazonのレビューを見るに前作を読んでからの方が良いかと。ペーパーバック版は500円ですので、セットで買えば送料無料ですね。というか、前作を最初に探さなかったのは間違いだったかもしれない。今度探してみよ。

「新しい」新しい単位 カラー版
「新しい」新しい単位 カラー版