「Adobeのソフトといえば何か?」といえば、高機能/高負荷/高価格の三つ。プロに最適化されたツールの類は初級者には使いこなせないことが多く、マニュアルも読みにくいために基本的な動作ロジックすら分からないこともしばしば。そういう私もその一人。
それゆえ解説本には「読みやすさ」「取っ付きやすさ」「発展のしやすさ」などが求められるものだが……今回直感で借りてきたこの本はどうなのだろうか。映像編集ソフトについて書かれた「Adobe Premiere Pro 1.5 Hyper Handbook」。著者は大河原浩一/笠原淳子/繁延あづさ。2004年10月発行。定価4,515円。出版社はローカス。ISBNは4-89814-555-8。
結論:これは標準付属すべきでしょう、Adobeさん。
何よりも読みやすさ
まず最初に感じたのが「結構読みやすい……」ということ。普通の解説本では構成要素を詰め過ぎて読みにくくなっていることが多いけど、これは違う。かなり念入りにデザインされているのだ。
- 余白が十分に広い
- 構成要素それぞれが広めにレイアウトされ洗練された印象を受ける。
- 無駄な線が無い
- 見出しや小見出しのみに使われているため余計な混乱を起こさない。
- 文字が小さめで字間/行間が広い
- 一つ一つの字がはっきりして読みやすい。やたらと字を大きくするより効果的。
- 色の使用が最小限
- 黒/深緑/芥子色で統一し使用範囲もかなり少ない。地の白が引き立ち色の意味も明確になる。
結果、図が多用されているにもかかわらず落ち着いて順を追い理解できるという「ハイパーハンドブック」の名に相応しいものとなっている。他の解説本が初級者を意識しすぎて混沌へと陥る中、この本は読みやすさというデザインを実現しているのね。このセンスかなり好み。
構成はどうなってるの?
目次を大雑把にまとめると、こうなる。
- Adobe Premiere Pro入門
- インターフェイス
- プロジェクトの設定
- 速習:ビデオ編集
- 機能別解説
- 映像のキャプチャと読み込み
- タイムライン編集
- エフェクト(効果)
- タイトルの作成
- オーディオの編集
- タイムラインの書き出し
- 実践篇
- 作例
- 付録:エフェクトの種類
扱う内容としては適切で、基本的なビデオ編集には十分すぎるもの。実際にこれまで私が手探りで学んだこともしっかりと書かれているし、それだけでは分からないことについても丁寧に説明されている。というかこんな便利な機能があったんだ……と自己流の危うさを再確認しました。これから編集を始める方には是非オススメしたい。
一応考察すると、解説本で一番難しいのは「始めてみよう」の章をどこに入れるかなんですね。この本では「速習:ビデオ編集」として3番目に出てきますが、これを最初に入れるとプログラマの思想が分からないまま小手先のテクニックになってしまう。かといって後になればなるほど実感が湧かずに学びにくい。3番目というのは適切ですが、今後の課題にはなるのではないでしょうか。
サンプルの素材はWebからダウンロードという形を取っています。CD-ROMが一般的かと思っていましたが、いずれにせよ入手できるのは良いですね。
気になった点としては、コラムの類が少ないこと。本編がまじめに作られているからこそ息抜きが必要かと思うのですが、果たしてどうなんだろうか。
まとめ
この本が向いているのは「ビデオ編集に興味があるけどやり方が分からない」という方や「Premiereには慣れたけど細かい動作が分からない」という方でしょうか。一から学ぶという目的に最適化されているため推薦できます。
逆に向いていないのは「使いこなせるから具体的な技術を知りたい」という方。そういう方には別途Tips本が必要でしょう。基礎はほとんど入っているので、後はご自由にお探しください――ってのは無責任か。
最後に一つ、この本は「Premiere Pro 1.5」対応です。最新版の「Premiere Pro 2.0」や、一般家庭向けの「Premiere Elements」には対応していませんので注意が必要。
さあ今すぐ図書館へGO……なのですが、「出かけるのは面倒」「近くの図書館に無い」という方はamazonへ。今回何とかアソシエイトのアカウントを取りました。4,515円と高めですが是非。